Netflixオリジナルドラマ「地面師たち」の元となった事件を徹底解説
ドラマ「地面師たち」について
『地面師たち』(じめんしたち)は、新庄耕の小説を原作とし、2024年7月25日にNetflixで配信が開始された日本のドラマです。この作品は、土地の所有者になりすまして売却をもちかけ、多額の代金をだまし取る地面師の犯罪を描いています。ドラマの基となったのは、2017年に実際に起きた被害額約55億円に上る「積水ハウス地面師詐欺事件」です。
ドラマ「地面師たち」のキャラクター
ドラマ「地面師たち」では、事件をモデルにしたキャラクターたちが登場します。
- 辻本拓海(演:綾野剛)
かつて父が経営していた不動産会社が地面師詐欺に遭い、家族を失った過去を持つ辻本拓海。彼は地面師グループの一員として、真面目なサラリーマン風の風貌で交渉役を務めます。 - ハリソン山中(演:豊川悦司)
地面師集団のリーダーで、元暴力団幹部。バブル崩壊後に再び動き出し、巧妙な詐欺計画を立てる山中は、英語が堪能で趣味はハンティングという一面を持ちます。 - 後藤(演:ピエール瀧)
元司法書士で、法律知識を活かし買い手との交渉や仲介を担当します。 - 麗子(演:小池栄子)
地主に成り済ます人物のキャスティングを担当し、教育も行う手配師です。 - 竹下(演:北村一輝)
土地や物件の情報を仕入れ、地主の情報のリサーチや土地価格の評定をする情報屋です。 - オロチ(演:アントニー)
竹下の使いパシリで、辻本には「地面師になりたい」と漏らしています。 - 長井(演:染谷将太)
身分証や公的証書の偽造を手掛けるニンベン師で、ハッキングのスキルにも長けています。
実際の事件概要
事件の舞台 東京都品川区西五反田にある旅館「海喜館(うみきかん)」で起こったこの事件は、不動産業界でも長らく注目されていました。積水ハウスは所有者を名乗る女性と、約600坪の旅館敷地を70億円で購入する契約を結びましたが、実際には詐欺グループによる巧妙な計画により、63億円を騙し取られることとなりました。
事件の発覚 積水ハウスが騙されたことを認めたのは2017年8月2日であり、その後、正式な所有者が登場し、土地を取得しました。この事件は不動産取引における本人確認の重要性を浮き彫りにしました。
実際の事件の経緯
- 前提背景
- 旅館「海喜館」の所有者は長年、不動産会社の売却要求を拒み続けていました。2015年3月に旅館は廃業しましたが、所有者は売却せずに居住を続けました。
- 詐欺の計画と実行
- 2017年4月3日、詐欺グループは転売目的で海喜館の土地を購入しようとする中間買主を見つけ、2000万円の申込証拠金を受け取りました。4月24日には積水ハウスが売買契約を結び、14億円の手付金を支払いました。
- 詐欺グループはパスポートと印鑑証明で所有者の身分を偽り、積水ハウスに急いで取引を進めさせました。6月1日に残金49億円が支払われ、所有権移転登記が申請されました。
- 事件の発覚
- 6月6日、法務局から不動産の本登記が却下され、積水ハウスは詐欺に気づきました。6月9日に被害届を提出し、9月15日に警察庁で刑事告訴が受理されました。
- その後の展開
- 詐欺事件後、旭化成グループが正式な所有者から土地を取得し、高層マンションを建設しました。
なぜ詐欺が成功したのか
- 本人確認の不備
- 不動産会社が通常行う「知人による確認」を怠り、偽の所有者の写真を近隣住民に見せて本人確認を行わなかったことが原因です。
- 稟議書承認の不備
- 土地購入の承認を得るための稟議書承認が適切に行われず、社長が飛び越し承認を行ったことが問題となりました。
- 妨害行為と誤認
- 真の所有者からの通知を妨害行為と誤認し、残代金の支払いを急いだことが詐欺グループの計画通りに進んだ要因です。
事件発覚前の不審点
- 所有者の誤り
- 偽の所有者が自分の誕生日や干支を間違える、現住所の記載に誤りがあるなど、不審な点が多々ありました。
- 決済方法の不自然さ
- 銀行振込ではなく、換金が容易な預金小切手が決済方法として利用された点も不審でした。
事件後の内紛
積水ハウスは事件後、内部での対立が表面化し、和田会長と阿部社長の対立が深まりました。これにより、企業統治の強化策が打ち出されるなど、内部体制の改革が進められました。
この事件を基に制作されたNetflixオリジナルドラマ「地面師たち」は、実際の事件をリアルに描写しながらも、フィクションとしてのエンターテイメント性も高い作品です。地面師たちの巧妙な詐欺の手口や、彼らの人間関係、警察との駆け引きが緊張感たっぷりに描かれています。ぜひご覧ください。