映画『ブルーピリオド』レビュー|芸術と青春の美しき描写
『ブルーピリオド』は、「マンガ大賞2020」を受賞した山口つばさの人気漫画を実写映画化した青春ドラマです。高校生の矢口八虎が、美術の世界に本気で挑む姿を描き、観る者の心に深く刺さる作品に仕上がっています。
あらすじ
矢口八虎は成績優秀で人望も厚いが、空気を読んで生きる日常に空虚感を抱いていた。ある日、美術の授業で「私の好きな風景」という課題を出され、八虎は「明け方の青い渋谷」を描くことで、自分の本当の姿を初めてさらけ出すことになります。この経験をきっかけに、八虎は美術に魅了され、国内最難関の美術大学への受験を決意。しかし、情熱だけを武器に挑む彼を待っていたのは、数々の困難で…
感想・レビュー
レビュー
『ブルーピリオド』は、夢を追い求める若者の姿を描いた力強い青春映画です。自分が本当にやりたいことを見つけ、それに向かって全力で突き進む主人公・八虎の姿は、多くの人に勇気を与えるでしょう。芸術とは才能か、それとも努力か――この問いに対して映画は、八虎の成長と葛藤を通じて真摯に向き合い、観る者に深い感動をもたらします。
映画の中で描かれる美術の世界は、単なる背景としてではなく、八虎の内面の変化や成長を映し出す鏡として機能しています。特に、「明け方の青い渋谷」を描くシーンは、彼が自分自身の本当の感情を初めて表現する瞬間であり、このシーンは作品全体の象徴的な場面となっています。
キャラクター再現の成功と惜しさ
実写化にあたり、キャラクターの再現は大きな挑戦でしたが、高橋文哉が演じたユカちゃんこと鮎川龍二の再現は特に見事でした。実写での再現が難しいと思われたキャラクターを見事に具現化した高橋の演技には拍手を送りたいです。しかし、尺の関係でキャラクター同士の人間関係や葛藤が削られた部分もあり、その点ではやや物足りなさを感じる観客もいるかもしれません。
美術表現と感動のシーン
映画では、八虎が美術に没頭していく過程が丹念に描かれています。自分のイメージをキャンバスにぶつける姿や、削ぎ落としていく作業は、彼の成長と覚悟を象徴しています。特に、美術大学受験を母親に告白するシーンは感動的であり、涙なしには見られない名シーンとなっています。また、海のシーンでの「正論の位置から見ている人には分からない」というセリフや、その後の裸のシーンも印象的で、実写だからこそのリアルさと美しさが際立っています。
作品のメッセージ
「自分にも何かできるかもしれない」「一歩踏み出してみよう」と思わせてくれるこの映画は、青春映画の王道を行く作品でありながら、努力と情熱がもたらす成果をリアルに描いています。「好きなことをする努力家は最強なんです」という美術教師の言葉が象徴するように、自分の好きなことに全力を注ぐことの素晴らしさが全編にわたって伝わってきます。
また、主人公・八虎が自分の夢に向かって奮闘する姿を通じて、観客もまた自分の目標に向かって一歩を踏み出す勇気をもらえるでしょう。作品全体を通して感じられるのは、夢を追うことの美しさと、それを支える周囲の人々との絆の大切さです。
結論
『ブルーピリオド』は、夢に向かって努力することの素晴らしさを描いた青春映画です。芸術の世界に挑む若者の姿は、観る者に大きな勇気と感動を与えてくれるでしょう。キャラクターの再現や美術表現の工夫、感動的なシーンの数々が、作品に深みをもたらし、心に残る一本となっています。