レビュー) 映画『aftersun/アフターサン』 / 父親とふたりきりで過ごしたひと夏の記録

スポンサーリンク

『aftersun/アフターサン』レビュー:心温まるストーリーとキャスト

aftersun/アフターサンとは

『aftersun/アフターサン』は、シャーロット・ウェルズ監督が手掛ける感動的なドラマで、父親と娘の関係を中心に描いた作品です。ウェルズ監督の長編デビュー作であり、自叙伝的な要素も含まれているため、非常にパーソナルな物語となっています。

タイトルaftersun/アフターサン
公開年2023年
イギリス
上映時間101分 
ジャンルドラマ
配信サービス配信状況
U-next×
NETFLIX×
Amazonプライムビデオ×
hulu⚪︎

\今なら30日間無料で見放題!/

※動画の配信情報は2024年7月時点のものです。配信状況により無料ではない場合があります。最新の配信状況は各動画配信サービスの公式サイトでご確認ください。

この映画の魅力

物語は、31歳の女性ソフィが、幼少期に父キャルムと過ごしたトルコでの夏休みの思い出を振り返るというシンプルな構成です。当時11歳だったソフィは、31歳の若い父キャルムと共に灼熱の陽光が照りつけるリゾート地で楽しいひとときを過ごします。この夏休みの映像がホームビデオのように描かれ、観る者に懐かしさと共感を呼び起こします。

しかし、映画の魅力はそのシンプルな物語の中に深い感情が込められている点にあります。ソフィが20年後に父と同じ年齢になった今、当時のビデオを再生することで、父親の真の想いや苦悩が明らかになっていきます。これにより、観客は現在と過去を行き来しながら、父親と娘の関係の変化と成長を感じることができます。

映像美と演出の妙

『aftersun/アフターサン』の最大の魅力の一つは、その映像美です。シャーロット・ウェルズ監督は、自然光を巧みに利用し、鮮やかな映像美を作り上げています。特にトルコの風景やプールサイドのシーンは、観る者を引き込む美しさがあります。空の青さや海の透明感、夕陽に染まる空といった自然の描写が、映画全体に詩的な雰囲気をもたらしています。

ウェルズ監督はまた、シーンごとの色彩や光の使い方にも細心の注意を払い、感情の変化やキャラクターの内面を巧みに表現しています。例えば、ソフィとキャルムが共に過ごす楽しいひとときには、明るい色調と柔らかな光が使われ、幸福感と安心感が強調されます。一方で、キャルムの内面の葛藤や不安が表れるシーンでは、暗い色調や影の多い構図が用いられ、観る者に緊張感や不安感を抱かせます。

映画の中でホームビデオ風の映像が挿入されることで、リアリティとノスタルジーが見事に融合します。これらの映像は、まるで観客自身がその場にいるかのような臨場感を与え、親近感を感じさせます。この手法によって、ソフィの視点から見た父との思い出が、より一層リアルに伝わってきます。

また、映画の音響デザインも映像美を引き立てる重要な要素です。自然の音や環境音が効果的に使われており、トルコのリゾート地の雰囲気がリアルに再現されています。特に、波の音や風の音がシーンに深みを与え、観る者をその場に引き込みます。

最後に、映画の編集も見事です。過去と現在が巧みに交錯し、ソフィの回想と現在の彼女の心情がシームレスに繋がっています。この編集の巧みさが、観る者に一貫した物語の流れを提供し、感情移入を一層深めます。

これらの要素が合わさり、『aftersun/アフターサン』は視覚的にも感情的にも豊かな映画体験を提供しています。映像美と演出の巧みさが、この映画を一層魅力的で感動的なものにしています。

演技

『aftersun/アフターサン』の演技は、映画全体の感動を支える重要な要素です。ポール・メスカルがキャルム役を、フランキー・コリオがソフィ役を演じています。メスカルは、内面に複雑な感情を抱える父親キャルムを見事に演じ、その自然体な演技は観る者の心に深く響きます。彼は父親としての優しさや愛情を繊細に表現しつつも、自身の抱える痛みや葛藤を見事に描き出しています。特に、彼の表情や仕草が、キャルムの内面的な苦悩をリアルに伝え、観客に強い共感を呼び起こします。

メスカルの演技は、彼のキャラクターが持つ二面性を巧みに表現しています。キャルムは一見すると楽観的で自由奔放な父親ですが、その内側には深い孤独や不安が潜んでいます。メスカルは、この対照的な側面をバランス良く演じ分け、キャルムというキャラクターに奥行きとリアリティを持たせています。例えば、娘と楽しく過ごす瞬間の明るさと、夜の海に飛び込んで泣くシーンの孤独感とのギャップが、彼の演技力の高さを示しています。

フランキー・コリオもまた、非常に優れた演技を見せています。ソフィ役として彼女は、無邪気さと成長過程での混乱をリアルに表現しています。彼女の自然体な演技は、観る者にソフィの視点から物語を体験させ、キャルムとの絆をより深く感じさせます。特に、ソフィの視線や表情が、父親への尊敬と愛情、そして疑問や不安を繊細に伝えています。コリオの演技は、その若さにもかかわらず非常に成熟しており、ソフィというキャラクターに深みを与えています。

また、二人の間の化学反応も見逃せません。メスカルとコリオの間には自然な親子の絆が感じられ、彼らのやり取りが非常にリアルで微笑ましいです。この親密な関係は、二人の演技力と相まって、観客に深い感動を与えます。彼らの共演シーンは、単なる演技以上のものであり、実際の親子関係を見ているかのようなリアリティを持っています。

さらに、映画のサポートキャストも忘れてはなりません。彼らは物語の進行において重要な役割を果たし、全体の雰囲気を支えています。特に、リゾート地での他の観光客やスタッフとのやり取りが、物語にリアリティを加えています。

総じて、『aftersun/アフターサン』の演技は、映画の感動をさらに深める要素として非常に重要です。ポール・メスカルとフランキー・コリオの見事な演技が、観る者の心に深く残る親子の物語を支えています。彼らの自然体でありながら感情豊かな演技が、この映画を一層魅力的で忘れられないものにしています。

感想

『aftersun/アフターサン』は、親子の絆や成長の痛みを描いた感動的な作品です。ソフィが20年後に父と同じ年齢になったことで初めて理解する父の想い、その切なさが観る者の心に強く響きます。監督の個人的な経験が色濃く反映されたこの作品は、シンプルなストーリーながらも深い感情と美しい映像で観客を魅了します。

この映画は、親子関係や人生の儚さについて考えさせられる作品であり、多くの人にとって心に残る一作となるでしょう。観終わった後も、その余韻が長く続く映画です。『aftersun/アフターサン』は、見逃せない感動のドラマであり、親子の絆を再確認する機会を提供してくれます。


-レビュー, 新着映画