予備知識
2つの時間軸
メメントでは「過去から未来へと時間が進む モノクロのパート」と「未来から過去へと進むカラーのパート」の二つが交差しながらストーリーが進んでいきます。
また、結末から始まり過去へと進んでいくので、記憶障害の主人公と観客が同じ視点で、何もわからない状況から過去に遡ることで徐々に事態を理解できていくような構造になっています。
この2つの交差するストーリーと結末から始まることを抑えておけば難解な内容も理解しやすいと思います。
作品のコンセプト
「人は幸せになるために嘘をつく」というコンセプトで制作されています。
このことをベースに、主人公が記憶がないのを良いことに自分の都合の良いように利用しているのか、もしくは本当に助けるための行動か。観客も主人公と同じように疑念を抱きながらストーリーが進んでいきます。
なぜ10分で記憶がなくなってしまうのか
レナードの記憶が消えてしまう10分間。
この10分という時間設定は、アメリカのアクション映画でシーン間に挟む短いエピソードの理想とされている時間です。これは、映画を見ている多くの観客の記憶は10分ほどで曖昧になってしまうということから設定されている時間です。
メメントでは現在から過去、過去から現在へと物語が進んでいくため、観客の記憶力も試されるような作りにもなっています。
そのため、主人公と観客が同じ視点に立っていることで、主人公と観客は大きな差はないことを体感的に理解していくようになっています。
2つの恐怖
主人公は記憶がないことで2つの相反する恐怖と闘いながら進んでいきます。
・過去の自分の情報を信じ、他人を遠ざける
・確かな情報を求めて、他人を信じる
自分の情報で進むとこぼれ落ちる情報の中で正しい方向へと進めているのかの不安、一方で他人を信じることは摂取や都合が良いように操られていないかの不安が伴います。
この二つの感情を知ることで、ストーリーで出てくる葛藤や刺青まで彫って未来の自分にメッセージを残す主人公の感情も理解できるのではないでしょうか?
話したくなる豆知識
メメントの脚本が生まれたきっかけ
クリストファー・ノーランの弟であるジョナサン・ノーランが書いた短編『Memento Mori』が原案で書かれた脚本になります。
メメントは「記憶に頼ることのできない主人公の希望的観測と無知をそのまま観客の視点にするべき」と考え、ストーリーの順番通りに脚本が描かれました。
このことで脚本を読む人は内容を理解するため、読み進めては数ページ前をめくり内容を確かめ、また読み進めるといった読み方をしていたそうです。
演者の脚本の読み方の違い
主演のレナード役のピアーズはレナードの混乱を経験するため、脚本の順序通り読み進め、
ナタリー役のキャリー=アン・モスは時系列順にどう感じていたか把握するために、脚本をバラして読んでいたそうです。
難解な脚本だからこそ演じる役によって読み方が変わってくるのは、この作品ならではないでしょうか。
配給先が決まらなかった?
メメントはその難解な内容から、完成から約一年間配給先が決まりませんでした。結局、自分たちで配給会社を立ち上げて、2000年にベネチア映画祭のワールドプレミアで上映されました。その後11の映画館で上映され、多くの評判を呼び最終的には531の映画館で上映されました。
トップ10に4週連続ランクイン・アカデミー賞のノミネートされるなど、誰も予想しなかったほどのヒット作品になりました。
映画に出てくるナンバープレート
ナタリーがレナードに教えた犯人の車のナンバー「SG13 71U」は、監督 クリストファー・ノーランの母校でもあるヘイリーベリーの郵便番号からとった番号です。しかし、ノーラン監督は間違って覚えていたようで、実際は「SG13 71N」だったようです。
何事も完璧と思われるノーラン監督でも間違えることもあるんですね。
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