予備知識
パン・ナリン監督の実際の出来事をもとに作製された映画
この作品は、監督自身の子供時代の実体験と映画への深い愛情が融合した、感動的な物語を描いています。
・父親が経営している売店の売り上げをくすね、映画鑑賞代に充てる
・母親が丹精込めて作ってくれる弁当を、映写室のおじさんにあげ、代わりに映写室に入り浸らせてもらう
・駅に保管されているフィルム(各地の映画館で上映する用)を勝手に盗み出し、切り貼りして編集し、オリジナルの映画をつくる
など魅力的なシーンはどれも実際の出来事を基に作製されました。
また時系列とは異なる点が一つあり、映画館が新しい映写方式になったのは2010年で、その時に英語のできなかったファザル (実際はモハメド兄貴) は職を失いました。2010年に帰省した時に映画がフィルム上映でなくなった話や、映画館が変わった話などをを聞き、本作を作るアイディアが浮かび映画を制作することを決めたそうです。
RRRよりも注目されていた作品
世界中の映画祭から喝采を浴びた本作は、日本でも大きな話題となった『RRR』を抑え、第95回アカデミー賞インド代表(国際長編映画賞)としてショートリストにも選出。トライベッカ映画祭ほか、世界中の映画祭で5つの観客賞を受賞し、さらにバリャドリード国際映画祭では最高賞にあたるゴールデンスパイク賞をインド映画として初めて受賞。と数多くの賞を受賞しました。
インドの現代のカーストを象徴する作品
サマイの家はヒンドゥー教徒のバラモン(四種姓と呼ばれるカーストの最高位)でありますが、貧しい生活を送っていることから、もうカーストではなく、映画内でも語られているように、英語ができる者とできない者で分けられていることがわかります。
また、この映画はグジャラート語で製作され、地域の文化や風景を生き生きと描いています。グジャラート州の日常生活、伝統、価値観が映画の中で巧みに表現されていま。
例えば、道路を走るチャッカル(グジャラート特有の三輪バイク)などは文化の特徴といえます。
話したくなる豆知識
少年・サマイ
一般の子供3000人のオーディションから選ばれた新星です。
監督は、この「子どもの自分」を描くために自分の故郷であるグジャラート州でロケし、出演者のほとんどをグジャラート語を話すその州の人から選らびました。そこには自伝的なものだからという面と「子役の作られた演技はいらない」、「訓練されていない新しい才能へのこだわりがあったそうです。
家族で観に行った映画「カーリー女神の奇蹟」は嘘!?
実際に子供時代に見た最初の映画は『カーリー女神万歳』でした。しかし、『カーリー女神万歳』当時父は、題名からてっきり宗教映画だと思って観に行きましたが、アクションやバイオレンス、さらには女性がお酒を飲んで踊ったりするシーンまで出る作品でした。タイトルに偽りありで、父にとっては大ショックだったようです。そのため映画内では「カーリー女神の奇蹟」の作品を使っています。
リアリティを出すため、当時の機材をかき集めた
本作の製作にあたり当時の映画館のリアルさを追求するため、インドのあちこちを捜がし、35ミリのフィルム上映ができる映画館を探しました。しかし、デジタルに変わっている映画館がほとんどでした。
しかし妹に相談したところ「子供時代に初めて映画を見た映画館がまだあるわよ」とまさかの返事があり、映画館の建物自体は残っていました。ところが中は倉庫になっており、サトウキビが積んでありました。そこでサトウキビを全部運び出して、昔通りの映画館に復元しました。こうして、運命的に最初の映画を見たギャラクシー座がよみがえり、映画の舞台となりました。
次に映画のフィルムや映写機、様々な備品等を探し始めました。しかし映画のフィルムはリサイクル専門業者が大量のフィルムを集め、何かに生まれ変わっていましたが、パンジャーブ州のジャランダルで何巻か見つかったり、各地の古い映画館から出てきたりして、そのフィルムを使用しました。映画関連機器は、毎年フランスで開かれている映画機器の古道具市で探し出しました。
オマージュシーン
リュミエール兄弟、エドワード・マイブリッジ、スタンリー・キューブリック、小津安二郎、黒澤明
など名だたる映画監督の名前が読み上げられるシーンがあり、映画に対する愛と先人へのリスペクトが感じられます。
また有名映画のオマージュがこの映画にはふんだんに散りばめられています。以下はその一部の事例です。
このほかにも多くのオマージュがあるので探してみてください。
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